13番目の恋人
 俺はこの日、香坂小百合と付き合うことになったと俊彦に話すつもりだった。俊彦と関係があったことも受け入れて、俊彦に手を出すなときつく言われても、出来そうにないと、言うつもりだった。
 
「あの飲み会の席での彼女の発言は、俺と大宮で冗談だという事にしておいた」
「大宮……ああ。小百合と同い年だな。まだ結婚なんて早い年かね、あいつは。あいつとなら……あと2年は待たないといけないか……」
 
 俊彦の脳内で、大宮が彼女の恋人候補として、考えられているのか。……本当にこの男が何を考えているのか、わからなかった。
 
「彼女、男性経験がそんなに多いタイプには、見えなかったが、お前とは半年程度のものなのか?」
そう尋ねると、俊彦はよくわからないな、と呟いて
「18年とかそんなもんじゃねえか」
 最近ちょっとした引き算も電卓だよな、などと言った。
 
 18?
 
「お前、付き合っていたのでは……」
「はあ?」
「彼女も否定はしなかった」
 
 随分と長い間があって

「おかしいと思ったんだ」
 俊彦は大きなため息を吐いた。何のことかわからず、俺はポカンとしていた。
 
「あいつに12人も元彼がいるわけがねえんだ」
 吐き捨てるように、俊彦が言う。いるわけがない?では、本気で彼女なりの冗談だったのだろうか。
 
 本気の冗談……って言葉がもうおかしいのだが。
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