13番目の恋人
「知ってる相手なのか」
「ああ、彼氏が出来たと聞いて、俺と慶一郎とで問い詰めた。男の方、をな。本気なんだろうなと」
 
 ……まて。彼女が15の時とあれば、23の男、しかもそこそこデカイ男二人に詰め寄られたとなれば……
 
「そいつ、あっさり、尻尾を巻いて逃げやがった」
 その男の子と言ってもいいくらいの年だった彼に、心底同情する。
 
「もうあの時には、手出してやがったのか」
「お前、それからもそんな事していないだろうな。彼女の恋路を邪魔するような……」
 
 俊彦は覚えがあったのか、目を泳がせた。
 
「邪魔はしていないが、俺たちが少しばかり注意をしたくらいで引くような男など、小百合にふさわしいわけがないだろう」
 
全く、絶句だな。だが、俊彦は彼女を大切に思っているのはわかったが、そういう関係ではなかったということか。
 ため息が出てしまう。
 
「なぜ、お前が彼女と結婚しなかったんだよ」
 いや、勿論、今は俊彦も、婚約者がいて、香坂さんが俺の恋人である限りそうなれば困るのだが。
 
「姉さんの方と話があったからな。それに、そんな目で見れなかった。可愛いんだもん」
 
 30過ぎた常務と呼ばれるほどの男は、照れもせず、真顔でそう言った。
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