13番目の恋人
「うん、そうだな。コミュニケーションスキルはどのみち必要だしな。よし、ひとまず、待て。またこの件は連絡する」

俊くんはそう言うと、カチャリとドアの鍵を開けた。

「畏まりました。常務、失礼致します」
私も、それを合図に退室した。

考えたことも無かった。お見合い結婚は恋愛じゃないと思っていた。それこそ、好きでもない人と結婚《《させられる》》のだと。

考えてみたら、幸せになれる結婚なら、どちらでもいいのか。

どうして私の結婚に対して俊くんが“待て”と言ったのか知らないけれど、ひとまずも何も、まだ好きな人すらもいないのだから何もすることはない。

秘書の仕事はなんていうか、他の部署と比べて、孤独なのかもしれない。会社でも毎日会う人は限られているし、少し敬遠されている気もする。

「何かあった?」
「いえ、大丈夫です」
「そ、何かあれば《《必ず》》報告してね。一人で解決しないで」
「……はい」
私の煮え切らないような返事に、園田さんは椅子をくるりと私の方へ向けた。

「何、言いなさい」
「いえ、仕事ではなく……」
私がそう言うとほっとしたものの、椅子はそのままの園田さんに
「秘書って孤独なんですね」
と、ぼそりと溢した。
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