13番目の恋人
目の前にいる人が、頼人さんなのはわかる。だけれど、なぜかは理解が追い付かない。
両親が退席すると、頼人さんは庭園の見える景色を障子で隔てた。私が、泣いていたからだ。
理解が出来ないのに、出てくる涙は止まりそうもなかった。着物に合わせた織物のバッグからハンカチを取り出す。
「隣に行ってもいいかな?」
優しい声に、涙は止まらず、頷くので精一杯だった。
「言えなくてごめん。なるべく急いだんだけれど、これが一番……」
「私……頼人さんと結婚……するの?」
「……君が、許してくれるなら」
許す……?
「私は、何か怒っているの?」
「……見合い相手が俺だって隠してただろ?」
「……隠していた? それじゃあ、頼人さんは知っていたの?」
何が何だか、何がどうなったのか。目の前に頼人さんがいるって事が信じられなくて……
「俺が、君と見合いを出来るように頼んだんだ」
「じゃあ、普通に交際で結婚しても良かったのでは……」
「これが、一番早く結婚出来る近道だったんだ」
近道……。
「どうしても、早く結婚したかった」そう言った彼も、「ちょっともらい泣き」なんて、目を潤ませた。
「……もしかして、頼人さん……頑張ってくれた?」
「うーん、少し、ね。俺はあんまり器用じゃないから」
嘘だと思う。彼の仕事ぶりを私はよく知っている。社内で私も仲良く話せる人はたくさん出来たのだから。彼の事を悪く言う人はいなかった。仕事の出来る人だって知ってる。
両親が退席すると、頼人さんは庭園の見える景色を障子で隔てた。私が、泣いていたからだ。
理解が出来ないのに、出てくる涙は止まりそうもなかった。着物に合わせた織物のバッグからハンカチを取り出す。
「隣に行ってもいいかな?」
優しい声に、涙は止まらず、頷くので精一杯だった。
「言えなくてごめん。なるべく急いだんだけれど、これが一番……」
「私……頼人さんと結婚……するの?」
「……君が、許してくれるなら」
許す……?
「私は、何か怒っているの?」
「……見合い相手が俺だって隠してただろ?」
「……隠していた? それじゃあ、頼人さんは知っていたの?」
何が何だか、何がどうなったのか。目の前に頼人さんがいるって事が信じられなくて……
「俺が、君と見合いを出来るように頼んだんだ」
「じゃあ、普通に交際で結婚しても良かったのでは……」
「これが、一番早く結婚出来る近道だったんだ」
近道……。
「どうしても、早く結婚したかった」そう言った彼も、「ちょっともらい泣き」なんて、目を潤ませた。
「……もしかして、頼人さん……頑張ってくれた?」
「うーん、少し、ね。俺はあんまり器用じゃないから」
嘘だと思う。彼の仕事ぶりを私はよく知っている。社内で私も仲良く話せる人はたくさん出来たのだから。彼の事を悪く言う人はいなかった。仕事の出来る人だって知ってる。