13番目の恋人
 クリスマスの約束……。

「無理言って作ってもらったんだ」
 
 それからちょこんと手のひらに箱を載せてくれた。中にはシルバーの綺麗な時計。
 
「ほら、お揃い」彼が腕を捲って見せる。そこには私の物より一回り太いベルトの時計。
「これは、結納で頂くほどの物では……」
「クリスマスプレゼントだよ、クリスマスだからね」そう言ってカレンダーを指差した。
 
 壁にわざとらしく、去年のカレンダーがつけられ、クリスマスに○がついていた。子供みたいで笑った。いい考えだと思ったのに、と、ばつが悪そうな彼に、今度は泣けてきちゃう。
 
「私、何もプレゼント用意していないのに」
「ああ、いいんだよ。君さえいれば」
 
 これは、あれなのかな。プレゼントは……私とか言えばいいのかな?そう思ったのに
 
「体で払って貰う」とか先に言い出した。
「もう! プレゼントは私って、言うと思ったのに!」
「あ、そうだ、俺もそのつもりで言ったのに、これじゃあただの悪人だね」

 泣いて、笑って忙しいけれど、彼がキスをくれるのを待って、目を閉じた。
 
 優しいキス。それから、トリガーになるような……キス。

「ねえ、まだ午前中なのだけれど……」
「ああ、あの時計ね、もしかしたら、夜の11時半じゃない?」
 
 彼はそう言って、キスを止めようとはしなかった。
< 187 / 219 >

この作品をシェア

pagetop