13番目の恋人
「あなたが、孤独だと思うよりずっとね……」
万里子さんが声のトーンを少し下げた。

それに合わせて、私も彼女の声が聞き取りやすいように少し近づいた。
「ごめんね、これ半年前に話せば良かったわ」
と、前置きして言った。
「私達は会社のトップに一番近いポジションにいるでしょう? だから、社員からも役員に近い存在だと思われているのよ。実際、私達に口利きさせようという人も近寄ってくるわ。でも、私達はただの一社員なのよ。平社員。それ、わかる?」
「はい、わかります」
「そうね、勘違いしないように。でも、一番近い場所にいるのは事実。時にはプライベートな部分も見ることになるしね。トップって孤独よ。誰も本音で話してくれないし、お偉いさんだからって、敬遠されがち。私たちはそのどちらの気持ちもわかるでしょ? 社員と役員をつなぐバイパスにもなれるわ」

そう言われて、私は……創業者の家に生まれ、経営者を身内に持っていて、この会社にも俊くんのお陰で入れた。俊くんとも仲良しだからって、役員の目線でいたのかもしれない。

そうだ、私はだから誰も知らないところで仕事がしたかったのだとハッとさせられた。

勘違い……私は勘違いしていたのかもしれない。

「もちろん、上司の個人情報とか守秘義務の漏洩はダメよ。だけど、他の社員とは節度さえ守れば仲良くやるに越したことはないわ」

万里子さんは、そう教えてくれた。
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