13番目の恋人
 ──小百合と過ごしている時、ふと
 
 「そういえば、あのリストどうした?」
 
 節々で思い出しては、少し気になっていた。なんせ、俺はもう職場で会うことはないが、あのリストの12人はあの職場にいるのだから。

「俊くんくれたやつ? 頼人さんと付き合った時に捨てたよ」
「そうなのか……その、大宮とか、日野とか」
「え、日野室長もあのリストに入ってたの?」
「覚えてないのか? 」
「見たはずなんだけどね、大宮くんしか覚えてない」
「ふうん」大宮は覚えてるのか。ふうん。
 
「13番目……」
「何?」
 
「頼人さん、13番目の人だね」
「何だ、それ」
 
 ふふっ、小百合が嬉しそうに笑った。

「仕事、楽しいか?」
「うん、前よりも話しかけてくれる人が多くなって。それに、後輩も入ってきたの」
 
 俺の知らない人の話をする。それに少し寂しいような気持ちになるが、嬉しそうな小百合に、良かったなーと思った。
 
 結婚したら、仕事どうする?なんていうのは、追々これからでいいか。もう少し楽しそうに話す小百合の、声を聞いていたい。心地よく可愛いらしい鈴が鳴る。
 
 今日も小百合のブラウスは一番上のボタンまでしっかりと留められている。それなのに、溢れる色香。子供のような動き。

 ずっと、見てられるな。
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