13番目の恋人
慶一郎にも俊彦にも「ままごと夫婦」などとからかわれているが、健気に頑張る小百合を見ていると、つい……。なるべく負担が少なく済むように俺が出来ることはしておこうと思う。

──いつの間にか出会った季節は一周した。俺たちは時々&(エスペルットゥ)へと向かう。

「夏期限定の新作、ほうじ茶アイスじゃない? ここは」
「ええ、でもキャトルカールに水羊羹も……」
「しょっちゅう食べてるだろ、それは」
「うん、でも……」

ああ、今日も俺たちの客単価は上がりそうだ。
「万里子さんと、N.と望月庵のコラボ、美味しい。あ!大納言が入ってる」

新作のほうじ茶アイスはうちの生クリームと万里子さんの実家である茶屋のほうじ茶、そして老舗望月庵の職人が丁寧に茹でた小豆が入っていた。コストと手間の関係で、&だけの商品だ。

「美味しい」スプーンで口に運び幸せそうに笑った。そうだな、これだって俺と小百合が出会わなければ、万里子さんと俊彦が出会わなければなかった商品だ。もっと言うと、慶一郎と万里子さんのスピードがなければ夏に間に合わなかったかもな。

万里子さんに出会って、小百合はとても行動的になった。好奇心旺盛な小百合のことだ。これからも興味のままに行動するのだろう。

ついに &(ここ)までも小百合の運転で来るようになった。小百合は思ったより運転が上手かった。あくまで小百合にしては、だ。一般的には……俺の肝が冷えて、このほうじ茶アイスより……冷たいんじゃないか?

「大型の免許取ろうかな……」
何の、ために?
「俺は小百合と家で過ごすのが好きだ」
そう言うと、恥ずかしそうに微笑んだ。

出来れば、これから小百合が運転する車はベビーカーくらいにして欲しい。
そう、切に願う。
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