13番目の恋人
 私の習い事は書道とピアノ。姉と兄は、水泳に剣道、あと、なんだったか。とにかく「やりたい」と言った習い事は全部やらせてもらったと言っていた。

 私も「やりたい」って言ったけれど、風邪をひいたら大変とか怪我をしたら大変とか、なんというか、やらせて貰えなかった。

 兄と姉は「やめたくてもやめさせてもらえなかった」「途中から苦痛だった」とか言っていたけれど……それは、《《やってみて》》やめたいって気付いたわけだから、《《やってみた》》こともない私は、やってみたかったなあって、羨ましく思っていた。


 いつしか、何かを欲しがることは諦めた。物を欲しがれば何でも与えてくれただろうし、何かをやりたいといえば熟慮され、家族会議まで開かれる始末。

 思い出してみたら、それほど欲しいものも、それほどやりたいことも無かったのかもしれない。それなりに幸せに過ごしてきた。

 
 ところが、小学校からエレベーター式の私学であったが、付属の大学へ進学し、大学3年生となり就職活動が始まる頃だった。

 自分の目指すの職業がOLというのはあまりにも漠然としていたのだが、なぜが、私はそれに憧れていたのだ。
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