13番目の恋人
「彼女、真顔でジョーク言うんだ、ほら、君が言うとみんな本気にするから!」
野崎さんが、そう言って、この話は終わりになった。

「……」
「あ、冗談……か」
「びっくりした」
「香坂さんの顔で言うと、結構ほんとっぽいっすよね。面白いな、香坂さん。酔うとちゃらけて!」
大宮くんが野崎さんと示し合わせるように冗談にして

「ほーんと、自分のキャラわかってんなー」
と、笑った。キャラ?

「さて、親睦だったな」
私は、この後、大宮くんに連れられて他の席に移動した。今度は男性がたくさんいる方へ。

「さっきみたいな話はしないで、適当に合わせといて」
と、耳元で言われ、私は男性達と挨拶を交わすと彼らの話を聞くに徹した。

時々は笑って、時々は誰だったかなあと大宮くんに訊きながら。お開きの時間になるまでそう過ごした。親睦を深めることが出来たのかはわからないけれど、明日から気軽に話せる人が増えるのかもしれない。顔も名前も覚えたし。来てよかったのかもしれない。

ただ、時々目が合う野崎さんには、苦笑いしかされなくなってしまったけれど。

常務の秘密や損益になることは話していないから、大丈夫だと思うのだけれど……。
< 54 / 219 >

この作品をシェア

pagetop