13番目の恋人
恋人を作るための交流はもう必要なくなった。
 リストの12人は大宮くん以外は覚えていない。もう見るつもりもない。あっという間にリストは必要なくなってしまった。野崎さんもリストに載ってる人だったのにな。だけど、野崎さんは……“13番目”だ。
 
 ──思わず出たため息、いけない、会社だったと顔を上げた。
 
すれ違う男性社員と目があったので笑って会釈した。向こうも会釈してくれた。あ、この前の飲み会の席にいた人だ。少し緊張したけれど、自然に挨拶が出来た。向こうも緊張したのか、少し頬が赤かった。こうやって親睦は自然にはかればいいのだと気づいた。きゅっと、口角を上げる。
 
 「あ、香坂さん、おはよう!」
 「おはようございます」
 上げたままの口角をもう少しあげて、挨拶をした。こちらも親睦を深めた、新庄さんだ。
 
「ごめんね、この前、つい珍しくてからんじゃった」
 
 野崎さん……確か、私の恋愛歴は冗談にしといてくれたと……
「いえ、こちらこそ、私の冗談は中途半端で面白くなかったみたいで……」
 私も話しを合わせて言った。
「あはは! そうね、あなたの事をよく知らない人は本当だと思っちゃうわよね。あなたならあり得そうというか……あ、悪い意味じゃないのよ?」
 
あり得そうとは、どういうことなのだろうか。首を傾げて彼女に説明を促した。
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