13番目の恋人
「……それ、本気のやつ?」そう聞かれ、観念して頷いた。

どのみち、私はわかりやすいタイプらしいし、私が野崎さんを好きだと自覚するより早く気づく大宮くんに隠しても仕方がない。

「あの日、野崎さんばっかりじゃないよ。大宮くんがいるから来た人もいるよ」
「そっかな、そんなことないと思うけど、まあ、サンキュ」
 
大宮くんは人懐こい笑顔を向けてくれた。彼もとても整った容姿だし、この性格とあればモテない理由はなかった。
 
「彼が、出向なことは知ってる?」
「うん」
「いつまでかも、知ってる?」
「詳しくは知らない」
「うちの会社はイベントメインだろ? 10月11月が繁忙期。その山が終わったらだって言われてる。はっきりとした事はまだだけど、引き続きとか、アフタフォロー入れたら3月かもしれないけど、年内かもしれないって、頭に入れといた方がいいよ」

そうか、ここへ来ても会えない日があるのか。恋人であることも、同僚であることも、どちらも期間限定なのか。
 
「そんな顔するなよ! 協力するし!」
 大宮くんはパシンと私の背中を励ますように叩いた。
 
 私がどんな顔をしていたのか、想像がつく。駄目だな、顔に出さないようにしたいのに。
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