13番目の恋人
俊くんを通して、私は祖父や父、兄の偉大さを再認識した。家ではただの温厚無口なおじいさんで、陽気なおじさんで、心配性のお兄さんって感じなのにうちの会社順調に業績をあげているということは、仕事の時はまた違うのだろう。
 
会社の一社員として働くことになって、大変なことなのだと思い知った。同時に、男性たちが、家ではごくごく普通の人でいられるのは、祖母や母がそれを支えてくれているからだ。
 私がこうやって家業から離れて自由にさせてもらえるのは、姉が本店をしっかりと守ってくれているからだ。今までどれほど家族に守られて、育ってきたか……。世間知らずの自覚の無さを思い知らされた。
 
与えられた今を精一杯頑張るつもりだった。ここへ呼んでくれた俊くんにも、感謝して。時間を大切にしよう、万里子さんのように。

「テーブルどうだった?」
「大きさは完璧でした。部屋の雰囲気にもぴったりでした!」
「何か不満?」
「椅子、買い忘れちゃって……」
「ええ、椅子無かったの!?」
「はい、また恋人が出来たら買いに……」
「すぐ行きなさい、今週末!」
「はい!」
 
そうだ、恋人はもういるのだった。期間限定だからと、蔑ろにするのは間違えてる。
 
「お買い物、付き合うわよ」そう言ってくれた万里子さんに
「いいえ、今回は」と、断りを入れた。
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