美青年幼馴染には恋人がいない。
「ううん、大丈夫ですよ。もう定時も超えてるから”さん”呼びで問題ないし、敬語じゃなくても大丈夫ですよ。」

「まじ?めっちゃいい人じゃん。」


急にくだけた。
敬語苦手なのかな?


「敬語苦手ですか?」
「まぁ、そうだな。」
「え、じゃあどうして営業部を選んだんですか?」
「なんか面接官みたいなこと聞くじゃん。…単純にかっけぇって思ったからっていうのと金かな。給料いいし。ほら橘さんが探してた先輩にあこがれて」
「へー!そうだったんですね!栄美さんかっこいいですよね!」
「そう!そうなんだよ!俺ってさ、顔いいじゃん。だからってわけじゃないけどさもっと良くしたいと思うことって当然だろ?だから身なりとかに気を付けてたわけ。」
「はい。」


なるほど。
確かに、若いってだけじゃないぐらい肌はプルプルしている…。
女性が羨む肌してるなー。


「それでメンズメイクとか、スキンケアとかしってさ。俺そっちの道を究めようとしたわけ。メイクアップアーティストな。でも親に反対されて”お前の取柄は顔だけなんだから、全員がお前みたいな顔じゃないんだよ”って。だから少しでも綺麗にしてやりたいっと思うのは普通の事じゃん?なのに…はぁ。」

「そんなことが…。」


確かに難しい道だから、親御さんが心配して反対する気持ちもわかるけど。
”顔しか取り柄がない”か…、もしそれを言われたらキツイだろうな。

彰も、高校生の時に小説応募してなかったらおじさんおばさんにそんなこと言われたのかな…?


「で、そん時に企業説明にきたわけ、どーせ夢叶えられないんだったらどこでもいいやって…あ、これナイショな。」
「ふふ、はい。内緒ですね。」
「わりーな。で、そん時の企業説明会にいたんだよ。伊藤栄美先輩が。最初は、お、メイク上手いじゃんとか身なりにきをつかってるじゃんとかぐらいしか思ってなかったんだけどさ。説明会の営業部のやりがいとか魅力を自信満々にしゃべってて、なんか、俺の思う完璧がそこにあったんだよ。」
「それでうちを志望してくれたんですね。」
「そう!まさか成績もいいとは思ってなかったけどさ。俺は完璧なあの人にあこがれてこの業界に入ったんだよ。ま、だからこそ負けたくねぇって思ってる」


あれ、まさかだけど荒井さんって…。


「それに先輩はさ、俺もメイク褒めてくれんだぜ?…あんな人に褒めてもらえたら自信もてるよな?」


栄美さんのこと好きなのかな?
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