美青年幼馴染には恋人がいない。
二人だけの特等席 黒木彰side
処女作『カーチャン』著作:黒木彰
これは俺が最初に書ききった小説。
なんとなく書いてみた小説。
主人公は男子高校生、好きな人と結ばれたいと思いつつ行動にできず最後は失恋で終わるこの話。
なんとなく応募した大会で優秀賞を貰った。
ただ、幼馴染に見てほしかっただけだったのに。
きっと幼馴染は見てない。
元々小説より漫画派で、漫画よりもアニメ派な彼女は小説を読まない。
タイトルは小学生の時の薫のあだ名。
なんとなく薫に見てほしかったこの小説。
ただ勘違いする人もいる、俺は断じて薫の事は好きじゃない。
というよりも好きが分からない。
好きな食べ物がない。出されたらそれを食べる。
苦手な食べ物ならあるけどそれ以外は普通。
楽しいのはわかる。
小説を書いている時は楽しいし、読んでる時は面白い。
でも好きとは違う。
『好き』はきっとそれがないと生きていけないもので、俺にはそれが分からない。
小説は楽しいし面白いがなくても生きてはいける。
薫もそうだ。
薫といるのは楽しいし面白いけど、いなくても生きていける。
だけど、とっさに言葉がでちゃった。
薫の彼氏となんか会いたくないのに。
「…言わなきゃよかった。」
薫はきっと俺じゃない人と結婚して幸せになる。
でもその近くに俺もいると思った。
二人だけの特等席。
あそこは薫を幸せにする人じゃない、俺と薫の特等席。
そこがなくなるのは少しだけモヤモヤした。