すてきな天使のいる夜に〜ordinary story〜
「うん、そうだね。」
何がきっかけで、喘息の発作に繋がるか分からない。
せっかくの楽しい日に、発作で参加出来ないのは嫌だから。
「沙奈、朝の聴診するからこっち向いて。」
洗い物を終えてから、大翔先生は私の隣に座った。
聴診器をあて、肺音に異常はないか喘鳴は出ていないかと念入りに聴診をしてくれる。
「うん。昨日より大丈夫そうだな。肺の音も問題ないし喘鳴も出ていないけど、とりあえず無理だけは絶対にしないでね。
それから、夕方皆が来たらゆっくり話せそうにないから今話すけど…
バーベキューの煙で発作に繋がる可能性もあるから、煙からは離れているんだよ。
それから、夕方で昼間よりは気温が下がると思うけどそれでもバーベキューの熱で暑いと思うから、気分が悪くなったりいつもと違う様子があったらすぐに俺か紫苑、翔太に話して。
それと、沙奈は水分をあまり取らないみたいだけど必ずペットボトル1本は水分はとるようにしてね。
まあ、たくさん注意することはあるけど一緒に楽しもうな。」
大翔先生は、事細かに私の体調の心配をしてくれる。
「うん。気をつけるね。」
「外へ出られる準備が出来たら教えて。
ゆっくりでいいから。」
大翔先生はそう言って、私の頭を撫でた。
薄く化粧をしてから、着替えを始めた。
今日は暑いから、お団子にしようかな…。
持ってきていたコテを取り出し温めてから、髪の毛の全体にトリートメント剤を吹きかけ、適当に髪を巻いていく。
手ぐしで背中まである髪を低い位置でかき集めてから、緩く団子の形を作り、顔周りの髪とおくれ毛を出し再び髪を緩く巻いた。
ちょっと緩いけど大丈夫かな。
最後に軽く金木犀に似た香りの香水をつけて準備が終わった。
そして、タイミング良く大翔先生も寝室から支度を整えて私の隣に座った。
「沙奈…。誘ってるの?」
「えっ?」
大翔先生の手が私へ伸びてきて、そのまま大翔先生の上に跨るように座らされていた。
私に顔を近づける大翔先生の瞳から逸らすこともできず、身体は金縛りにあったように動けなくなっていた。
「可愛すぎる。」
聞き返す間もなく、大翔先生に顎を掬われ気づいたら唇を塞がれていた。
深いキスを交わしてから、唇をそっと離し、首元鎖骨へとキスを落としていく。
気づいたら背中には柔らかい感触があり、ソファーへ押し倒されていた。
服から手が入り込み、胸の膨らみを包み込んだ時思わず身体がビクンと反応し、完全にスイッチが入った大翔先生の手を止めるように声をかけた。
「ちょ、ちょっと。大翔先生…!」
心臓が、うるさいほどに音を立てていた。
このまま大翔先生としたい。
大翔先生となら、何も怖くない。
それが、正直な気持ちだったけど…
大翔先生と、前にこういう雰囲気になった時、私を大切にしたいからそういう行為は高校卒業してからって話してくれたことを思い出した。
だから、万が一大翔先生にスイッチが入って大翔先生自身の歯止めが効かなくなったらその時は私に止めてほしいと言っていた。
私を目の前にすると、冷静でいられなくなる時がある。
そう話していた。
「ごめん、沙奈。
あまりにも可愛すぎたから…」
申し訳なさそうな表情で、私に謝る大翔先生。
あまりにも切ない表情に、私は思わず大翔先生の頭に手を乗せた。
「大丈夫。
本当は…その…先生からこういうことされるの…嫌じゃないから…。
大翔先生に触れられるの…本当は嬉しいから…」
恥ずかしくて死にそう…
顔が驚くくらい熱くなっている。
「沙奈…。ありがとう。
本当、反則だよその顔は。
俺ももっと沙奈に触れたい。だけど、あと半年は俺も何とか抑えるから。」
大翔先生は、そう言って再び自分へ私の体を引き寄せた。
大翔先生に抱き寄せられてから、私は大翔先生の車に乗り買い物へ向かった。