すてきな天使のいる夜に〜ordinary story〜
「うん。先生、覚えてる?


奈子ちゃんと私は、母親は違うけどあの人との血の繋がりがあるの。


今は私、あの人のことはあまり気に止めてないけどね。


それから、奈子ちゃん。心臓に病気があって喘息もあるって言ってた。


奈子ちゃんも、それで入退院を繰り返しているからいつも仲良く補習を受けてるんだ。」



可愛い笑顔で、沙奈はそう話してくれた。



「そうか。補習授業は辛くない?」



「うん。教室のエアコンがちょっと寒くてお腹痛くなっちゃう時があるんだけど、それ以外は何も辛くないよ。」



「いや、お腹痛めてしまうんだったら大きな問題だろ?


教室の温度は変えられないのか?」



「…うん。何かね、職員室でエアコンの温度は管理してるんだって。


言えば、上げてくれるみたいなんだけど皆暑いって言うから先生に言いにくくて。」



沙奈の優しい気遣いは、時々心配になる。



相手を思って、無理をしてしまうから。



「沙奈がお腹を痛めて、補習受けられなくなったらそれこそ本末転倒だろう?


無理はすることないよ。」



「…そうだね。来週、先生に相談してみる。」



「そうしてね。それに、沙奈は元々平熱も低いし低体温になりやすいから。」



沙奈の平熱は35〜35.5℃の間を行ったり来たりしている。



体質的な所だけど、少しの気温の変化や寒い所での体温調節が出来ているか心配になる。



「知ってたんだ。私の平熱が低いの。」



「知ってるよ。沙奈の診察を初めてした時から。」



最初の診察の時、何度体温を測っても34.8℃だった。



診察の前に、眠っていたと聞いて元々平熱が低く低体温になりやすい体質であることが分かった。



だからこそ、沙奈の体温調節は慎重にやっていかないといけない。




「そっか。先生はやっぱり凄いね。」




「ありがとう、沙奈。


沙奈、お腹は空いてるか?」




外来の診察が終わって、沙奈を迎えに行ってから、時刻はもう20時を回っていた。



「んー、あんまり空いてないかな。」



「そうか、お昼はちゃんと食べたか?」



そういえば、前にもこんなことがあったよな?



沙奈は、夏になると食欲が落ちるから心配になるって紫苑が言ってたよな。



「…お昼は、凍らせたゼリーを持って行って食べた。あと、これ。カロリーが少し高めのクッキー。


いらないって言ったんだけど、紫苑が持たせてくれたの。


1つしか食べれなかったんだけどね…。」



「そうか…。


冷たい物なら食べられそうかな?」




「うん。大丈夫。」



沙奈の体重の変化はいつも大きく、夏になると一気に減ってしまう。



身長も146cmで、体重が30kg~35kgを行ったり来たりしている。



酷い時は、30kg下回る時もある。



沙奈の歳の子から比べて、体は一回り以上に小さいから心配になる。
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