すてきな天使のいる夜に〜ordinary story〜
食欲はどうしても、何かできるというわけではないからな。
食べられる物を少しずつ食べていくしかないよな。
「私も手伝う。」
「沙奈は座ってて大丈夫だよ。
補習もあって、診察もあったからだいぶ疲れただろ?」
「ちょっとだけ疲れたけど、大翔先生と一緒にやりたい。」
「そうか。辛くなったら言えよ?」
「うん!」
何て穏やかで、幸せな日常のワンシーンなのだろうか?
こんなに可愛い子が隣にいてくれたら、俺はもう何も望まない。
それから、一緒に料理をしてご飯を食べた。
「洗い物は俺がやるから、沙奈は少し休んでな。」
「大丈夫、私も一緒に…」
「沙奈、無理はするな。
すごく眠そうだよ?
身体も疲れただろう?
お風呂沸いてるから、先に温まって来ちゃいな。」
本当は、一緒に入りたい。
それが本音であっても、絶対許されない。
きっと、一緒にお風呂に入ったら俺は理性を無くしてしまう。
診察や、手術でも沙奈の身体は見てきたけどいつも命の瀬戸際にいる沙奈を救うことで精一杯だったからな。
「うん、ごめんね。」
沙奈は、持ってきた荷物の中からパジャマと下着を取り出し一緒にお風呂場へ向かった。
「タオルとか、シャンプーとリンス、ボディーソープとか、紫苑に聞いて沙奈がいつも使ってる物を用意したから、好きなように使っていいからね。」
沙奈が泊まりに来る1日前に、紫苑に沙奈がいつも使っている物を聞いていた。
沙奈のことを知りたかったのは前提として、肌があまり強くない沙奈はいつもと違う物を使って荒れてしまわないか心配だった。
アルコール消毒や、少しの間だけでも絆創膏を貼っていると赤くなったりしているからな。
きっと肌があまり強くないんだろうな。
「え、わざわざ用意してくれたの?」
驚きを隠せず、沙奈の目がいつもより輝いていた。
「まあな。いつもと同じ物の方が、沙奈もリラックスしてゆっくり眠れるだろうと思って。」
「大翔先生、ありがとう!」
笑顔で楽しそうにはしゃぐ沙奈を見て、子供の一面を見せてくれることに安心できる。
そんな彼女が可愛い。
さっきまであんなに眠そうだったのにな。
「じゃあ、俺はリビングにいるから何かあったらすぐに呼ぶんだからな?
あと、あまり長湯はしないこと。」
「すぐに呼んでって…恥ずかしくて何があっても呼べないよ。」