すてきな天使のいる夜に〜ordinary story〜
そう言って、頬を赤らめる沙奈。
白い肌にピンクに染まった頬がたまらなく可愛い。
「大丈夫だよ、診察とか手術で何回か沙奈のことを見てきたから。」
「そ、そういう時はそれどころじゃないでしょ!」
そう怒りながらも、沙奈の顔色は変わらない。
少しずつ、沙奈の感情の変化を見せてくれるようになったのがたまらなく嬉しい。
そんな可愛い彼女を、今すぐここで襲いたい。
その気持ちを抑えながらも、俺は沙奈の体を自分の元へ引き寄せた。
「あんまり怒るなって。
そんなにプンプンしてると、発作に繋がるぞ。」
「…ずるいよ。」
そう言いながらも、沙奈は俺の背中に手を回してくれた。
心臓が口から出そうな程、鼓動が大きく早くなっていく。
やばいな…
そろそろ、この辺にしないと…
歯止めが効かなくなりそうで怖い。
「じゃあ、沙奈。
長湯しない程度で、ゆっくり温まって来な。」
「うん。」
食器の片付けを終えて、ソファーに腰を降ろしテレビを見ながらパソコンで作業をしていると、近くにあった沙奈の携帯に、紫苑からの着信が入った。
今、お風呂に入ってるんだよな…
俺が出たら、不審に思われるだろうか?
だけど、ここで電話に出なかったら紫苑が心配するよな?
そうでなくても、紫苑はいつも昼休みに沙奈からの連絡が帰ってこないと1日中心配している。
同じ事を何度もやったり、医師記録も短くなったりしている。
それくらい、沙奈は紫苑にとって大きな存在なんだろうな。
「紫苑、ごめんな。沙奈、お風呂に行ってるんだ。」
「そうか、ありがとう。沙奈の代わりに出てくれて。」
「いいんだ、それより沙奈のお泊まりを許可してくれてありがとう。」
「こちらこそ。沙奈のあんな幸せそうな顔初めて見たんだ。
準備している時も、楽しそうだった。
沙奈にとって、大翔といる時が1番幸せなのかもしれないな。」
そう言いながらも、電話越しで紫苑はきっと切ない表情をしているんだろうな。
声から、そんな様子が頭に浮かぶ。
「紫苑、沙奈は紫苑と翔太の妹だろう?
沙奈にとっての兄は、紫苑と翔太しかいないんだ。
紫苑が、そう言ってくれるのは嬉しいけど沙奈のこと1番分かってるのはやっぱり紫苑と翔太なんだよ。
まあ、2人に負けてられないけどな。」
「ありがとう、大翔。
じゃあ、今日は夜も遅いからゆっくり休むように沙奈へ伝えてくれ。
あ、あと寝る前に温かい飲み物を飲ませてくれないか?
少しでも、体温の低下がないようにいつも飲ませているから。」
「ああ。分かった。
それじゃあ、おやすみ。」
「おやすみ。」
紫苑との電話を切った。
沙奈と過ごしてきた時間は、紫苑と翔太の方が遥かに長い。
それに、沙奈の1番の理解者だとも思っている。
安心出来る、唯一の帰る場所だから。