小さな恋のうた
キモい?(片野瀬×八女)
よく目の合う女子がいる。休憩時間など、ふとした時にだ。時々、授業中にも。そんな時、その女子は慌てて目を逸らす。なにか見てはいけない物を見たかの様に、さっと逸らされる。そこで、普通なら俺に対して気があるんじゃないかって勘違いしてしまうところなんだろうけど、多分、一度気にしてしまった俺が彼女をちらちらと無意識のうちに見てしまっているんだろう。それで、彼女は気まずくなって視線を逸らしているんだ。
現実は小説や漫画のように上手くいかない。
彼女の名前は片野瀬紬。女子の間では『つむつむ』と呼ばれている。女子の中でも小柄な方で、ややふっくらとした体型の持ち主。性格も明るく、ふにゃりと笑った顔がとても可愛い。好きだ……とまではいかない、でも気になる女子。
対するオレはイケメンでは無い。どちらかと言うと、中の下だ。二つ上の姉に、俺の顔面偏差値を尋ねてみた事がある。姉の答えは『名前を書けば受かる私立並み』だった。俺に対して辛辣な姉。それを差し引いて中の下と僕は判断した。下の上にしなかったのは、俺自身、少し悲しかったからだ。
とある日。二時限目と三時限目の間の休憩時間に、僕は同じ野球部の柳川に用事がある為、柳川のいる教室へと向かっていた。そこに前の方から歩いてくる三人の女子。片野瀬さんとその友達二人が楽しそうに話しをしていた。そして、片野瀬さんは僕の存在に気がつくと、話しをやめ、僕から視線を逸らしてしまった。
僕はそれがショックだった。
そこまで嫌がられているという事に。確かに俺がちらちらと見ていたのかもしれないけど、そこまで嫌な思いをさせていたのだと気がついた。
その後の俺は、授業中でも休憩時間でも溜息ばかりついていた。溜息をつきすぎて、普通の呼吸の仕方を忘れてしまいそうだ。そんな時、隣の席の女子から声を掛けられた。
「あんた、なんばそげん溜息ばかりついとるん?」
小倉遥香。ソフト部副部長であり、昔からの縁で、何かと軽口などを言い合える仲である。
「ん、イケメンは良かなぁっち思ってさぁ……」
「なんそれ?」
「いや、俺みたいなブサイクはさ、すぐにキモいっち思われるやろ?イケメンやったらきゃぁきゃぁ言われるやろなぁ……」
「なんかあったん?」
俺は小倉に片野瀬の事を話した。その話しを黙って聞いてくれている小倉。
「ぶふぉっ!!」
だが話しを聞き終わった小倉が突然吹き出した。そして、あははっと大声で笑っている。さすがに少しムッとした。
「なんがおかしかとやん?俺は真剣に話しとったとばい?」
「いやぁ……ごめんごめん。あんたがほんとにバカやけんでさ」
「はぁ?」
笑い過ぎて出た涙を拭きながら、小倉がちらりとよそを向いた。その視線を俺も追うと、その視線の先には片野瀬がいた。片野瀬もこちらを見ていたせいか、僕と片野瀬は、ばちりと目があった。
だけど、いつもの様に、さっと目を逸らされてしまう。
「……はぁ。なぁ、見たやろ?絶対キモいっち思われとる」
また溜息が一つつくと、俺は机の上にだらりと覆いかぶさった。
顔を上げる気力もない。
だから俺は、片野瀬が落ち込んでいる俺を心配そうにじっと見ていた事や、その片野瀬に小倉がぱちりとウインクしていた事なんて知りもしなかった。
「いやぁ、青春やねぇ」
どんっと俺の背中を叩くと、また小倉は大きな声で笑った。
現実は小説や漫画のように上手くいかない。
彼女の名前は片野瀬紬。女子の間では『つむつむ』と呼ばれている。女子の中でも小柄な方で、ややふっくらとした体型の持ち主。性格も明るく、ふにゃりと笑った顔がとても可愛い。好きだ……とまではいかない、でも気になる女子。
対するオレはイケメンでは無い。どちらかと言うと、中の下だ。二つ上の姉に、俺の顔面偏差値を尋ねてみた事がある。姉の答えは『名前を書けば受かる私立並み』だった。俺に対して辛辣な姉。それを差し引いて中の下と僕は判断した。下の上にしなかったのは、俺自身、少し悲しかったからだ。
とある日。二時限目と三時限目の間の休憩時間に、僕は同じ野球部の柳川に用事がある為、柳川のいる教室へと向かっていた。そこに前の方から歩いてくる三人の女子。片野瀬さんとその友達二人が楽しそうに話しをしていた。そして、片野瀬さんは僕の存在に気がつくと、話しをやめ、僕から視線を逸らしてしまった。
僕はそれがショックだった。
そこまで嫌がられているという事に。確かに俺がちらちらと見ていたのかもしれないけど、そこまで嫌な思いをさせていたのだと気がついた。
その後の俺は、授業中でも休憩時間でも溜息ばかりついていた。溜息をつきすぎて、普通の呼吸の仕方を忘れてしまいそうだ。そんな時、隣の席の女子から声を掛けられた。
「あんた、なんばそげん溜息ばかりついとるん?」
小倉遥香。ソフト部副部長であり、昔からの縁で、何かと軽口などを言い合える仲である。
「ん、イケメンは良かなぁっち思ってさぁ……」
「なんそれ?」
「いや、俺みたいなブサイクはさ、すぐにキモいっち思われるやろ?イケメンやったらきゃぁきゃぁ言われるやろなぁ……」
「なんかあったん?」
俺は小倉に片野瀬の事を話した。その話しを黙って聞いてくれている小倉。
「ぶふぉっ!!」
だが話しを聞き終わった小倉が突然吹き出した。そして、あははっと大声で笑っている。さすがに少しムッとした。
「なんがおかしかとやん?俺は真剣に話しとったとばい?」
「いやぁ……ごめんごめん。あんたがほんとにバカやけんでさ」
「はぁ?」
笑い過ぎて出た涙を拭きながら、小倉がちらりとよそを向いた。その視線を俺も追うと、その視線の先には片野瀬がいた。片野瀬もこちらを見ていたせいか、僕と片野瀬は、ばちりと目があった。
だけど、いつもの様に、さっと目を逸らされてしまう。
「……はぁ。なぁ、見たやろ?絶対キモいっち思われとる」
また溜息が一つつくと、俺は机の上にだらりと覆いかぶさった。
顔を上げる気力もない。
だから俺は、片野瀬が落ち込んでいる俺を心配そうにじっと見ていた事や、その片野瀬に小倉がぱちりとウインクしていた事なんて知りもしなかった。
「いやぁ、青春やねぇ」
どんっと俺の背中を叩くと、また小倉は大きな声で笑った。