小さな恋のうた
お願い(五木×桧原)
「〇月29日」
僕の隣で雑誌を読んでいる五木さんがぼそりと呟いた。小さかったけど、僕へはっきりと聞こえるくらいの声。
僕はあれから図書室じゃなくて、屋上出入口前ですごしている。五木さん曰く、二人だけの秘密基地。
だけど、あの時から少し変わった事がある。今までは一人で過ごしていたけど、今は五木さんも時々やってくる様になった。邪魔をしないなら、僕が来ても良いと言ったのだ。
毎日じゃない。
五木さんがやってくる時は予めLINEで連絡がある。
やってくると僕のイヤホンを片方から外し、自分の耳へとつける。そして、静かに雑誌を読んだり、スマホを触ったりして過ごしていた。
ほとんど、会話らしい会話はない。
だけど、今日は違った。
不意に五木さんが僕へと話し掛けて来たのだ。
「……?」
僕は五木さんの言葉の意味が分からなかった為、ぼやっとした顔で五木さんの方を見ていたのだろう。
「私の誕生日っ!!」
五木さんはそう言うと、ぷくぅっと頬を膨らまして僕を睨むようにみている。その顔を見た僕は昔飼っていたリスを思い出してしまった。
「え、あっ……そ、そうなん?」
「ソーナンスッ!!」
あるアニメのキャラクターの真似をして敬礼をする五木さんの行動に、固まってしまった僕。
「……」
「……」
「……」
「……誕プレ、待っとるけん」
「えぇ……」
「五木さん、欲しい物とかあるん?」
「ピアノ……」
「……おもちゃの?」
「違うしっ!!ピアノば弾いて……私だけの為に」
初めこそ勢いがあったが、途中からは消え入る様な声へ変わった。二人だけの静かな秘密基地じゃなければ聞こえなかったくらい。少し頬が赤く染まっている様に見える。
「えぇっ?!」
「だ、だめなん?」
「……」
「ご、ごめんね……無理ば言うて」
黙ってしまった僕に、しゅんっとなり俯いてしまった五木さん。
「い、いや、良いけど……僕はそんなに上手くはないよ?」
「それでも良かよ……私はあんたに弾いてもらいたいんやけん」
頬を赤らめ、ごにょごにょと唇を尖らせて喋っている。そんな五木さんを見ていると、断る事もできないし、適当に弾くわけにもいかない。
「わ、わかったよ。五木さんの誕生日まで、練習してくるけん」
「ありがとうっ!!絶対、絶対、約束やけんねっ!!」
太陽の様な眩しい笑顔。きらきらと輝くその表情から思わず視線を逸らしてしまう。僕と五木さん。不相応な事くらい分かってる。だけど、僕の心の中で、五木さんの存在が大きくなってきていた。
僕の隣で雑誌を読んでいる五木さんがぼそりと呟いた。小さかったけど、僕へはっきりと聞こえるくらいの声。
僕はあれから図書室じゃなくて、屋上出入口前ですごしている。五木さん曰く、二人だけの秘密基地。
だけど、あの時から少し変わった事がある。今までは一人で過ごしていたけど、今は五木さんも時々やってくる様になった。邪魔をしないなら、僕が来ても良いと言ったのだ。
毎日じゃない。
五木さんがやってくる時は予めLINEで連絡がある。
やってくると僕のイヤホンを片方から外し、自分の耳へとつける。そして、静かに雑誌を読んだり、スマホを触ったりして過ごしていた。
ほとんど、会話らしい会話はない。
だけど、今日は違った。
不意に五木さんが僕へと話し掛けて来たのだ。
「……?」
僕は五木さんの言葉の意味が分からなかった為、ぼやっとした顔で五木さんの方を見ていたのだろう。
「私の誕生日っ!!」
五木さんはそう言うと、ぷくぅっと頬を膨らまして僕を睨むようにみている。その顔を見た僕は昔飼っていたリスを思い出してしまった。
「え、あっ……そ、そうなん?」
「ソーナンスッ!!」
あるアニメのキャラクターの真似をして敬礼をする五木さんの行動に、固まってしまった僕。
「……」
「……」
「……」
「……誕プレ、待っとるけん」
「えぇ……」
「五木さん、欲しい物とかあるん?」
「ピアノ……」
「……おもちゃの?」
「違うしっ!!ピアノば弾いて……私だけの為に」
初めこそ勢いがあったが、途中からは消え入る様な声へ変わった。二人だけの静かな秘密基地じゃなければ聞こえなかったくらい。少し頬が赤く染まっている様に見える。
「えぇっ?!」
「だ、だめなん?」
「……」
「ご、ごめんね……無理ば言うて」
黙ってしまった僕に、しゅんっとなり俯いてしまった五木さん。
「い、いや、良いけど……僕はそんなに上手くはないよ?」
「それでも良かよ……私はあんたに弾いてもらいたいんやけん」
頬を赤らめ、ごにょごにょと唇を尖らせて喋っている。そんな五木さんを見ていると、断る事もできないし、適当に弾くわけにもいかない。
「わ、わかったよ。五木さんの誕生日まで、練習してくるけん」
「ありがとうっ!!絶対、絶対、約束やけんねっ!!」
太陽の様な眩しい笑顔。きらきらと輝くその表情から思わず視線を逸らしてしまう。僕と五木さん。不相応な事くらい分かってる。だけど、僕の心の中で、五木さんの存在が大きくなってきていた。