狂犬に愛される覚悟
「零王、返して!」
「やだ…!電話なんかしないで?
俺といるんだから!」
「でも、仕事の電話だろうし…
お願い……!零王」
まるで駄々をこねる子どものようだ。
愛妃は、言い聞かせるように零王に話した。

「わかった。その代わり……ここで、電話して…?」
そう言って、自分の足の間を指差した。
「え?零王の横で?」
「横ってゆうか、前?」
「う、うん…わかった」
しかたなく、零王に後ろから抱き締められる形で電話する羽目になったのだ。

零王の足の間に座ると、ギュッと抱き締められ、後ろからはい!とスマホを渡された。
「ありがと」
と言って、スマホを操作し佐崎に電話する。

『はい、お疲れ様~鈴野さん』
「あ、さっきはすみませんでした。出れなくて……」
『ううん、それでさ来月からの企画の件で、取り急ぎ情報交換したくて会えないかなって電話したんだ』
「あ、そうだったんですね。すみません」
『今からでも、会えないかな?』
「え?会うのはちょっと……
………んん…」
すると、零王がうなじや耳にチュッチュッとキスをしだした。
愛妃のお腹の辺りに回っていた手も、スカートの裾から滑り込んでくる。

『ん?鈴野さん?』
「や…いえ、何も……と、とにかく会うのは難しいので、明日出勤した時にお願いします」
『そうだよね…ごめんね……』
「いえ……こちらこ、そ、すみま…せん……」
『え?ほんと、大丈夫?』
「ちょっと、待って下さい。
…………ちょっと!零王、やめて!電話しにくい…」
佐崎に断りを入れ、小声で零王に抗議する愛妃。

「だって、寂しいんだもん!
早く終わらせて、電話切って!
愛妃とラブラブした~い!」
零王は、佐崎に聞こえるように言ったのだ。
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