狂犬に愛される覚悟
「零王…?」
「うん、お願い…出てきて?」
「今は一人にして?」
「やだ!」
「お願い…」
「やだ!愛妃の顔が見たいんだもん!
見せて?」
トイレのドア越しに話す、二人。

「……それ、私のせいなんだよね?」
「え?」
「私のせいで、零王は犬系男子を演じてるんでしょ?
私が、怖がりだから」
「それは違うよ」
「え……?」
「もちろん、愛妃にあんな俺見せたくないのもあるけど、愛妃にだけは甘えたいんだ」
「私…だけ…?」
「そう、愛妃だけ」
「だって、俺が本気で愛した女だもん!」
「零王…」
「お願い…出てきてよ?
それで、ギューッてさせて?
で、キスして…その後もいっぱい愛し合おうよ!」

カチャン━━━と鍵の開く音がして、愛妃がドアを開けた。
そして零王に抱きついた。
「やっと出てきてくれた……」
「ごめんなさい…仁朗さんに、当たっちゃった……」
「ううん…悪いのは、仁朗!」
「零王」
「ん?何?」
「キス…したいな…」
「うん…」
両手で愛妃の頬を包むように上に向かせる、零王。
そのまま口唇が重なった。

「ンン……」
「……愛妃、可愛い…
大好きだよ……!」
「私も…
どんな零王も大好きだよ…!だから、無理しなくていいよ!怖いけど、喧嘩する零王のことも嫌いなれない。離れられないの」
「うん…でも、できる限り見せないよ。
愛妃には、甘えたいから」

二人で店内に戻ると、仁朗が愛妃の前に駆けつけ平謝りをしてきた。
「愛妃さん!すんませんでした!」
「え?え?
謝るのは、私です。
ごめんなさい!」
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