狂犬に愛される覚悟
「愛妃、着いたよ~!」
「………」
愛妃は零王の背中に顔を埋めて、しがみついていた。
「愛妃~?」
実は目がかなり潤んでいて、涙が溢れそうなのだ。

「………ドライブしよっか?」
「え…?」
思わず、顔を上げた愛妃。
「まだバイク乗りたいのかなって、思って」
「あ…違うの!
ごめんね…すぐ、降りるから」
慌ててバイクから降り、ヘルメットを零王に渡した。

「えーー!降りるの?
愛妃がギューッて抱きついてくれてて、良かったのにぃ!ドライブしよ?」
零王はバイクに跨がったまま、愛妃にヘルメットを押し返した。
いつもなら、すぐ家に帰りくっつきたがる零王。
きっと零王は愛妃の様子がおかしくて、ドライブしよと言っているのだろう。

「零王」
「ん?」
「キスしたい」
「え?ここで?」
「うん、ここで」
「じゃあ…家に帰ってからしよ?」
「嫌!
ほら!私の口唇、ここ!」
口唇を指でトントンと叩く、愛妃。

「いいの?結構、人いるよ?」
「零王は、嫌?」
「俺は構わないよ?どこでも」
「じゃあ…しよ?」
そう言うと、ヘルメットを外した零王が愛妃の顎を持って、口唇を重ねてきた。

「ンン……ん…んー、長いよ…零王…」
「だって、愛妃の口唇美味しいんだもん!
それにキスするなら、深ーいキスがいい!」
「もう…///」
「………少し、落ち着いた?」
「え?」
「なんかあったんでしょ?仕事で。
泣きたくなるようなこと…」

「ううん、私が悪いの……
ヤキモチ妬いて、嘘ついちゃって自己嫌悪……」
「え!?何、その嬉しい言葉!」
「え?」
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