狂犬に愛される覚悟
店員に断りをいれ、試着室で着替えている愛妃。
零王は、ショップの外でスマホを片手に煙草を吸っていた。

「あれー?鈴野さんの彼氏さんだ!」
「は?」
「あ、倉石です」
「あー、で?何?」
覚めた目で倉石を見る、零王。
基本的に愛妃以外には何の興味もない為、冷たい零王。

「へぇー、君が鈴野さんの?」
「あ?」
「めっちゃカッコいいでしょ?」
「確かに…」

「零王ー!お待たせ!
……って、倉石さん?と、あ…日野さん…」
「この前はどうも」
「あ、はい…」
無意識に、零王の服を掴む。
その咄嗟の愛妃の仕草に、何かを察する零王。

「あーお前か!」
「は?」
「愛妃に、変なことしようとした奴」
「何?」
「てか、お前…恋人いるんだよな?
女の指のサイズを知りたいってことは」
「うん、いるよ、婚約者」
「じゃあ…なんで、愛妃の手を掴んだり変なこと言ったりすんだよ!?」
「可愛いから」
「はい?」
「鈴野さんって、苛めたくなるんだよね?
それに、独身の内に色々遊んでおきたくて…
君だってあるでしょ?
彼女以外の女の子と遊びたいとか!」
「ない」
「は?」
「ない。愛妃以外、全く興味ない」
「嘘だろ?
例えば、ここにいる倉石だって結構いい女じゃん!」

「そう?
愛妃以外の女はよくわかんない。
てか、愛妃以外の人間の価値がよくわかんない」
「そっか…なんか、話しててこっちがバカらしい……
行こうぜ、倉石」
倉石を連れ、去っていく日野。

「零王、カッコよかった!素敵」
「そ?
てか、アイツ……うまくいかないな、結婚」
「そうだね……」
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