幼馴染は片思い中
「…」


羨ましいとか、妬ましいとか
そういう感情があるのは
きっと当たり前なんだと思う

どんなに汚くて醜い感情でも

人ならあって当然


問題は、それを誰かに向けてしまうこと

それで、相手を傷つけること





『近寄んな、根暗』


『オタクはどっかいけ!』


『キモいんだよ。ブス』




「…」



思い出したくもない記憶が
フラッシュバックして



「ゆたか」



いつの間にか立ち上がっていた朔君が
私の右手首を掴んでた

その視線を辿れば
自分の左腕にくっきりと浮かんだ赤い爪痕



「…あ」


また無意識に爪を立てていた


イライラしたり
不安になったり
嫌な気持ちになった時にしてしまう癖


ざわざわと騒ぎだした感情をなだめるように
朔君は私を抱き締めて
優しく頭を撫でてくれた



「…」



それでも消えないもやもやと気持ち悪さ

どうしようもないほどの不快感


抗う術もなく、私はただ目を閉じた
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