幼馴染は片思い中
ベッドですやすや眠っている朔君
その傍らに腰をおろす


「…」


しばらく無言でその寝顔を眺めれば
まるで、その視線に気付いたかのように
ふっと、朔君の目が開いて

寝ぼけ眼の朔君が私を捉える


「………なんか、良いことでもあった?」


開口一番
眠たそうな声で、そんな事を聞いてくる

無言で小さく頷けば
朔君はどこか嬉しそうに表情を和らげて
私の頭を撫でた後、再びまぶたを閉じて
眠りに落ちた


「…」



『なんか良いことでもあった?』


朔君の問いかけを反芻して
昼間の出来事を思い出し
自然と口許が緩む


ほんの少しの会話と食事


他の人から見たら
たった一瞬の、些細な事で


でも、私にとっては大きな出来事



……嬉しかった


ぎこちなくても会話が出来たこと

自分のした事に『ありがとう』が返ってきたこと

自分の好きなものを誰かと共有出来たこと


朔君以外の人に対して
そう思えたことが


嬉しいとか楽しいとか
感じられたことが



すごく、嬉しかった
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