幼馴染は片思い中
「先生、あの時
わざとふたりきりにしましたね」


この間の事を問い詰めれば
デスクで珈琲を飲んでいた臼井先生は
少し意地悪そうに笑う


「日山さん、音無さんにずっとお礼を言いたがってたから。
それに、音無さんも日山さんの事
気になってたんでしょう?」


何も話していないけど
観察眼の鋭い先生には
私の気持ちはお見通しのよう


「……あの子、いじめられてるんですか?」

「中学も似たような感じだったみたいね」


先生は隠すことなく肯定した


「担任には私の方から話をして
色々、対応して貰ってるけど」


「それで、表面上は収まったとしても
裏で嫌がらせが続く可能性はあるし」


「もしかしたら、そのせいで
さらに状況が悪化するかもしれない」


「なにより
問題が解決したからと言って
本人が受けた痛みや傷は
そう簡単には消えないわ」



……。




『気持ち悪いんだよ』



……いくら時間が流れても

どれだけ忘れたくても

嫌な言葉や
嫌な出来事は根強く記憶に残るもの
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