幼馴染は片思い中
「あのね、私、お礼を言いたかったの
この間はありがとう」

「……え?」

「音無さんが助けを呼んでくれたって
牧(まき)君に聞いたの」



……。



「……ごめんなさい」

「え?」

「…私、なにも出来なかった」


日山さんの顔をまっすぐ見れなくて
うつむきがちに謝れば
日山さんは、「そんなことないよ」と
すぐに否定した


「あのね。私、学校行くの
ずっと苦しくて
でも、最近は音無さんがいるから
学校行くの楽しくなったんだよ」


「お話してくれて
一緒にお弁当とか食べたり、勉強したり」


「そういうのが、すごく嬉しかったの」


「音無さんと一緒にいるのが
すごくすごく、楽しかったの」



そっと顔を上げれば
本当に嬉しそうに笑う日山さんがいて



「私ね。音無さんと友達になりたいな」



ずっと、私が言えなくて
飲み込んできた言葉を
あまりにもあっさり口にするものだから

こんな私に
純粋な好意を向けてくれるものだから



「…」



呆気に取られて



それから



すごく泣きそうになってしまって
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