幼馴染は片思い中
喜ぶ私に、朔君は口許を緩めた


……あれ、朔君、機嫌戻った?


「日山とはうまくやってんの?」


通常モードに戻った朔君が聞いてくる
あまり気にせず、話に乗る


「この間ね
一緒にモールに買い物に行ったよ」

「へぇ」

「後ね、猫カフェとかカラオケも
初めて行った」

「ふーん」


最近の出来事を振り返る

友達と寄り道したり、買い物したり
遊んだりした経験なんて、今までなかった

だから

ここしばらく、あいりちゃんと一緒に色んな所に行ったり、色んなことをしたり

そんな時間がすごく新鮮で、楽しかった



「それでね」


一度、口火を切ったら
つい興奮して、話が止まらなくなってしまう

ひとり盛り上がって、あれこれ話す私

でも、朔君は嫌がらず
優しく相づちを打ちながら
耳を傾けてくれる



「楽しかったか?」


ひとしきり話終えた後
朔君が聞いてくる

笑顔で頷けば、朔君は柔らかく微笑んだ


「?朔君、なんで嬉しそうなの?」

「お前が喜んでるから」

「…」


さらりと返された言葉に、不意をつかれた


………ずるい返し


そんな優しい顔で、自分のことのように
嬉しそうに言わないで欲しい


心臓の鼓動が早くなる



「……朔君が
デートしてくれたら、もっと喜ぶ」

「じゃあ明日、どっか行くか」

「え……?」

「お前が行きたいとこ、付き合うけど」

「…」


照れ隠しで言った冗談の言葉に
思いがけない返答が返ってきて固まる私



「行かねーの?」



読めない表情で朔君が聞いてくる




………。




「……………行く」
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