幼馴染は片思い中
「お前、本当は
こういう騒がしい場所、嫌いだろ?
アトラクションもそんな得意じゃねーし」



慣れない人混み、騒音に
ずっと頭が痛かったこと


絶叫系や
激しいアトラクションは苦手なこと



「あのふたり、思った以上に体力あるし
合わせんの、しんどいんじゃねーの?」



広い園内、皆についていくだけで
実はいっぱいいっぱいだったこと


楽しげな空気を壊さないよう
無理して合わせていたこと


表に出さないように
ずっと、我慢してたこと



……



「なに笑ってんの」

「……嬉しくて」



頬を緩める私
見下ろす朔君は不思議そうな顔



いつも


いつもいつもそう



朔君は誰よりも早く、気づいてくれる


辛いとき、苦しいとき、悲しいとき


いつだって、すぐに気づいて


気にかけて、傍にいて



守ってくれる



優しい言葉を、気持ちを向けてくれる




「……朔君の、そういうとこが好き」


自然と笑顔になる

そうさせてくれる朔君が好き


「…」


笑いかければ
朔君は目を見開いて

それから、なんでか落ち着かなさそうに
視線を逸らして

かばんから取り出したタオルを
私の目元にぼふりと被せた


「休んでろ」


そっけない声

だけど、そんな声とは裏腹に
優しい表情を浮かべているのが
遮られた視界の中で、簡単に想像できた
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