幼馴染は片思い中
「……朔君」

「なに」

「本当に、もう大丈夫」


何度目になるか分からない『大丈夫』を
口にすれば、朔君は真顔で問いかけてくる


「なに。俺が傍にいるのがそんなに嫌?」

「……………嫌」


いつもなら絶対口にしない言葉
だけど、背に腹はかえられない

小声で返せば
朔君はびっくりした顔で私を見る


いつも朔君朔君言いながら
べたべたしてくる私に
拒絶されるなんて思いもしなかった様子


「………い、「今」は嫌……」


慌てて言い直せば
朔君はベッドに片肘をついて
じっと私を見つめる


「素顔なんて見慣れてる」

「私も見られても平気」

「寝顔も見慣れてる」

「それも大丈夫」

「寝相悪いのも知ってる」

「気にしてない」

「じゃあ、なにが問題?」

「………朔君を襲っちゃうから」

「は?」

「自分が何するか分からないから
早く出てって欲しい」


半分本当、半分冗談な言葉
朔君がその発言に引いて
早く出てってくれることを祈った


「……よく分かんないけど
病人に襲われるほど、俺、か弱くないから」


朔君がぎゅっと私の手首をつかむ


「ほら。振りほどけないだろ?」

「…う…っ」

「こんな細い腕で、体で
俺をどうこうできるわけないだろ」

「……うぅ…」


正論


線が細くても朔君は男のひと
力も、私なんかよりずっと強い
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