幼馴染は片思い中
「置いてかない」


朔君は落ちついた顔で、声で
しっかりと私が欲しい言葉をくれる


普段ならそれで満足してた
安心して笑っていられた


でも、今は


胸の中を占拠するのは不安ばかり

頭の中は恐怖でいっぱいで

全身には焦りが駆け巡っていた


平静でいられない
朔君の言葉を受け入れられない



「……そのうち……いなく…なる…」

「いなくならない」

「……『一番』が……できたら……
朔君は、いなく、なる…」


朔君がせっかく否定してくれたのに
望んだ言葉を、また、くれたのに

私の口から出るのは
その優しさを突き返す言葉ばかり


弱々しい小さな声

なのに、前と同じ
どこか相手を責め立てるような
刺々しさがある


「いなくならない」


朔君が何度否定してくれても
受け入れられない


だって



私が朔君に選ばれることは絶対ない



朔君が選ぶのは別の人



ずっと一緒にはいられない


いつか、私は朔君に置いていかれる



いつも見ないふりをしていても

色んな言葉で自分を誤魔化していても


本当は、ちゃんと分かってる




「いなくならねーって」

「……ひとりにする」

「しないって」



押し問答は続く

でも、段々声を返すことがしんどくなって

多分、朔君が言った通り
熱が上がっているせいだと思うけど
ものすごく頭がぼんやりして

体も頭も言うことを聞かない



「とにかく。ゆたか、薬飲め」

「…」


朔君が何を言っているのか
自分が今、どういう状況になってるのか
もう分からなかった
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