幼馴染は片思い中
「はい、どーぞ」

「…ありがとう」


目の前に置かれたグラスを眺めて
お礼を言う

テーブルを挟んで
向かいに腰をおろしたあいりちゃんは
同じくオレンジジュースの入ったグラスを
手に取った


「……あの、ほんとに…ごめんね…」

「言い出したのは私だから
気にしないで」



体調が良くなって、数日
私は、あいりちゃんの家に避難していた



……はっきりとは、覚えてないけど…



あの夜の
おぼろげに残る朔君とのやりとり



『……ひとりにする』



ずっと、隠してた不安と本音
弱っていたせいか口にしてしまったことだけは、はっきりと覚えていて


やらかしてしまったことを自覚した私は
あの後、なんやかんや理由をつけては
朔君を避けていた

あからさまに避ける私
朔君は『なんで?』と疑問を向け
連絡を寄越してきたけど

私は一言、『ごめんね』とメールを
返したきり、朔君からの連絡を無視してる


メールや電話は来るけど
私が嫌がるって察してる朔君は
無理矢理、家に押しかけてきたり
学校で待ち伏せしたりはしなかった



様子のおかしい私を心配したあいりちゃんに、事情を話したのが今朝のこと

それなら、しばらくうちに泊まらないかと提案されたのも同じく



いくら会わないようにしてても
家が隣な以上、鉢合わせになる可能性はあるし

今は
物理的にも朔君と距離を置きたかった私は
あいりちゃんのその提案に
ふたつ返事で頷いた
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