幼馴染は片思い中
「……朔君が、気にしてないのは分かってても…私が、嫌なの…」


朔君にとっては
さして気に留めるような言葉じゃなかったとしても

私にとっては大問題



見られたくない本心を
隠して置きたかった本音を

見られたこと、口にしてしまったこと


情けなくて、恥ずかしい






いずれ

置いていかれることも

ひとりになることも

分かっていたこと


けど、『今』じゃない


『今』は
まだ隣にいたいから

まだ、それが許されるからって

見ないふりをして
朔君の傍にいられたのに



あんな風に、言葉にしてしまったら
これから、自分の気持ちを押さえ続けて
現実をみないふりを続けることなんてできない



「……一緒にいたいって伝えるのが
どうして、だめなの?」

「……ずっと一緒にいられないの、分かってるから」

「望月君にそう言われたの?」


要領を得ない私の言葉
でも、あいりちゃんはちゃんと声を返してくれる



「なら、分からないよ
望月君の気持ちは望月君にしか分からない」


「…」


「少なくても
望月君はゆたかちゃんの事、大事に想ってる
それは見てて分かるもん」

「……それは」



……。



自分の気持ちがうまくまとまらなくて
返す言葉に詰まって、黙り込んでしまう私

あいりちゃんは、それ以上何も言わず
だけど、優しい笑顔を浮かべて
見守るように、ずっと私の傍にいてくれた
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