幼馴染は片思い中
ぽたぽた、指の隙間から落ちた雫が
床に小さな水たまりを作っていく

喉が震えて、痛くて
もう、言葉が出せない

ぐずぐずと鼻をすする音だけが響く



「…ゆたか」


朔君が、近付いてくる気配がする


「顔、上げて」


真剣に話したい事がある時
朔君はしっかり相手の目を見て、話す


今、朔君は大事な話をしようとしてる


「…」


うつむいたまま、ふるふると首だけ横に振って
顔を覆っていた手で、両耳をふさぐ


ああ、自分は今からフラれるんだと
確信してしまったから




…………聞きたくない



怖い



朔君の口から、決定的な言葉を告げられるのが



自分で伝えておいて
返事を求めるような真似をしておいて
往生際が悪いのは分かってる


でも、聞いてしまったら
もう、戻れない



……朔君から、拒絶されたら………私は……





「……。
………………ひとりに、しないで…」
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