幼馴染は片思い中
かすれた涙声で、懇願した瞬間だった


「…」


耳元に置いた手に、朔君の手が重なって
そのまま、ゆっくり上向かされる


そして


拒む間もなく、一瞬で唇を奪われた



にじんだ視界の先に、伏せた長いまつげ


目を見開いたまま、放心していると
朔君がゆっくりと、目を開いて

訴えるように、じっと、私を見つめた後


「!」


触れていた唇が、離れたと思ったら
また
今度はさっきよりも長く、深く


「…ん、っ、~~~っ!」


初めてのキス
なにがなんだか分からなくて

混乱して、頭もうまく回らなければ

動揺して、うまく呼吸も出来ない


苦しくなった私は、朔君の胸を押して訴える
だけど、朔君はそんな私をちらりと見下ろし

あろうことか、いっそう深く
刻み付けるようなキスをしてきた



「~~~~っ!?!!」



驚きで止まっていた涙
今度は苦しさから、にじんで溢れる



「……」



……っ…
……本当に、も、無理……


意識が遠のきそうになって
ようやく、朔君は私を解放してくれた





「俺の好きは、こういう好きなんだけど
お前と違うの?」




真っ赤になって
乱れた呼吸を整える私と対照的に
しれっとした態度で朔君は言う
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