幼馴染は片思い中
―――……


「後、勘違いしてるみたいだけど
俺、引っ越さないから」


涙もすっかり引いて
暴走気味だった感情が
ようやく落ち着いてきた頃、朔君が言った


「………え?」

「引っ越すのは、父親と母親だけ。俺は残る」

「…」

「行きたい大学も、こっちで決めてたし
もともと、高校卒業後は一人暮らしする気だったから」

「…」









…………えっと………つまり……
………………………全部、私の早とちり………?



一瞬、停止していた思考が動き出した瞬間



「~~~~っ!?!?」



硬直していた私は
再び、真っ赤になって、声なき悲鳴を上げた


………そうだよ


思い返せば
朔君、微妙に話が噛み合ってないみたいな態度だったもん…

途中で何か言おうとしてたし…

それなのに
ひとりで勝手に勘違いして、先走って

取り乱して、暴走して、朔君を困らせて…



「…………恥ずかしい……」



また、両手で顔を覆う

羞恥で縮こまる私の横で
朔君がくすりと笑う気配がした



「俺は、嬉しかったけど」



…。


朔君がこぼした言葉に反応して
そっと、顔を上げる



「俺がいなくなることに
あれだけ、取り乱してくれたのが嬉しかった」



「お前が俺を必要としてくれるのが
たまらなく嬉しかった」



何度も
嬉しかったと繰り返す朔君を見上げる
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