レインコートもいいけど、傘は必要
1.雨の日の放課後
「レインコートもいいけど、傘は必要じゃないかな……」
僕、星野 拓也が親身になって話かけながら、折りたたみ傘を差し出す。
目の前に立つ同級生の女子生徒、姫井 渚は首を左右に振って拒否してる。
小声でブツブツ呟いてるけど、雨音でよく聞き取れない。
全身を雨に打たれながら、キミは不機嫌な表情のまま。
なんでだろう……
「しつこいのよね、いらないって言ってるのに……」
私が拒否しても、クラスメイトの男子生徒、星野 拓也が折りたたみ傘を押しつけてくる。
雨音でよく聞こえないようだから、首を左右に振って否定した。
でも、結果は同じで、彼がロッカーに普段から常備してる折りたたみ傘を差し出してくる。
アンタは大きな高級傘で降りしきる雨から身を守ってるからいいわよね。
私はレインコートの中が蒸し暑く、制服もジメジメして不快よ。
中学を卒業して、地元から少し離れた高校へ電車通学する二人は考える。
どうしたら姫井 渚は、僕が差し出す傘を受け取ってくれるだろう……
不快な思いをしてまで、私がレインコートを来てる理由を星野 拓也は知らない……
自分の傘を受け取ってほしい男子生徒と、真実を知られたくない女子生徒が
雨の日の放課後
お互いの瞳を見つめたまま、その場に立ち尽くしていた……
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