レインコートもいいけど、傘は必要


 目を細めて憂鬱そうに見つめる視線の先には、生徒たちが傘をさして下校する姿があった。


 そこへ、委員長の星野が教室に入ってくる。

 寂しそうに自分の席へ座り、外を見つめる姫井が気になって声をかけた。


「まだ帰ってなかったの?」


「……」


「僕は先生に呼ばれて、職員室にいたんだよ」


「……」


「雨、やまないね」


「……」


 姫井に話かけても、言葉が返ってこない。


「職員室の窓ガラスに水滴がたくさん付いてたけど、だんだん小降りになってくるらしいね」


 黙ってるのも気まずいので、無視されても星野は積極的に話かけてる。

 でも、姫井は嫌味な言葉を返してきた。



「私のこと、雨女とでも言いたそうね?」


「いや、そんなことないと思うけど……」




 星野の気遣いも虚しく、姫井は顔を横に向けて外を見つめてる……





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