レインコートもいいけど、傘は必要
「ごめんなさい星野くん、冗談よ」
「そうなんだ、ビックリした……」
星野は苦笑いしながら姫井を見つめても、外に視線を向けたままの状態で反応は無い。
かと思えば急に立ち上がり、帰り支度を始めてる。
「姫井さん、帰るの?」
「そうよ、下校する生徒の姿も少なくなってきたしね」
姫井は視線を合わせないまま、教室を出て行こうとする。
――その時、星野は気付いた。
姫井が傘を持ってないことを……
「ちょっと待って!」
星野が声をかけても、姫井は無視して教室を出ていく。
「なぜ、待ってくれないんだ!」
あきれて愚痴を言った後、星野も急いで帰り支度をすませる。
雨の予報は知ってたので、自宅から大きな高級傘を持って準備はしていた。
自分のロッカーに常備してる折りたたみ傘も取り出し、教室を飛び出る。
でも、すでに姫井の姿は廊下にない……