レインコートもいいけど、傘は必要


 星野は慌てて追いかける。

 廊下を走り、階段も二段飛ばしで駆け下りてく。


 やっとの思いで生徒玄関にたどりつくと、姫井はすでに屋根の軒下でレインコートを着て歩き出そうとしていた。



「まってよ姫井さん!」


「……」



 大きな声で名前を呼ばれた姫井は、振り返って無言のまま見つめてる。

 星野は高級傘を開いて駆け寄り、手に持っていた折りたたみ傘を姫井に差し出した。


「これ、つかってよ!レインコートを着るより、楽だと思うんだけど……」


 星野の好意に対して、姫井は眉を潜めながら不機嫌な表情で話す。



「よけいなお世話よ」


「でも……」


「それと、大声で私の名前を呼ばないでくれる。目立つから」


「だって、姫井さんが小学生みたいにレインコートを着てるって噂されてるから……」




 目線を下げ、俯いた星野が寂しそうに言う……





< 13 / 21 >

この作品をシェア

pagetop