レインコートもいいけど、傘は必要
星野は慌てて追いかける。
廊下を走り、階段も二段飛ばしで駆け下りてく。
やっとの思いで生徒玄関にたどりつくと、姫井はすでに屋根の軒下でレインコートを着て歩き出そうとしていた。
「まってよ姫井さん!」
「……」
大きな声で名前を呼ばれた姫井は、振り返って無言のまま見つめてる。
星野は高級傘を開いて駆け寄り、手に持っていた折りたたみ傘を姫井に差し出した。
「これ、つかってよ!レインコートを着るより、楽だと思うんだけど……」
星野の好意に対して、姫井は眉を潜めながら不機嫌な表情で話す。
「よけいなお世話よ」
「でも……」
「それと、大声で私の名前を呼ばないでくれる。目立つから」
「だって、姫井さんが小学生みたいにレインコートを着てるって噂されてるから……」
目線を下げ、俯いた星野が寂しそうに言う……