レインコートもいいけど、傘は必要
5.トラウマなのよ
翌日の朝、濃い灰色の雲が空を覆い尽くしていた。
星野は学校に向かうため、地元の駅で電車に乗り込む。
座席にすわり、数分ほど進んだ二つ目の駅に到着。
たくさんの人が乗車してきて、車内が一気に混み合う。
姫井も人混みに押されながら乗車、星野の側で手すりに掴まり電車に揺られながら立ってた。
そんな中、見慣れない制服を着た女子生徒三人組が、割り込みながら姫井に近付いてくる。
この時間帯に乗車してこない女子高生たちは、姫井に体を密着させながら何かを話かけていた。
どうやら、姫井と同じ中学の同級生らしい。
他の高校の生徒だけど、顔見知りのようで何かを話かけてる。
――星野は直感で気づいた。
話し方と態度を見て、スクールカーストに間違いない。
姫井はすごく嫌そうな顔をして体をモジモジさせてるけど、スクールカーストに周りを取り囲まれてるので逃げようがない。
座席にすわる星野は、成り行きを見守ることしかできない状況。
「レコちゃん、高校生になっても雨の日はやっぱりレインコートを着てるの~」
レコちゃんと呼ばれてるのを耳にして、星野は不快な思い。
レインコートだからレコちゃん、中学生の時に呼ばれてた姫井のアダ名だろう。
きっと本人は、不本意な気持ちで苦しんできたはず。
「レコちゃん、相変わらず左手をスカートのポケットに入れて隠してる。変わらないよね、小学生の時に雷に打たれてからずっと!」
星野は座席にすわったまま、顔を俯かせるのが精一杯。
でも、姫井を取り囲む女子生徒の話は耳にしてる……
――その時!