レインコートもいいけど、傘は必要


 三人組の中の一人が、姫井の左手を掴んでスカートのポケットから強引に引き抜いた。


 星野は思わず、反射的に目を向けてしまう。



「やっぱり!手の平の火傷(やけど)あと消えてないわね」


「マジで消えてないの?傘の先端に落ちた雷の電気が、左手に流れて地面に落ちたんだっけ!」


「当時の担任が言ってたんだよねぇ~!レコちゃん!」



 三人組の女子生徒がケラケラと笑う中、姫井は左手を振りほどいて握り拳を作る。

 悲しそうな表情で、自分の左手を見つめたまま。

 顔を俯かせ、口を一文字に噤んで何も言い返さない。



「短気な性格、なおしなさいよ。すぐにブチ切れて大声だしたら、せっかく地元から離れて新しい環境で出直した意味ないしぃ~!」


「そうそう、レコちゃんが通学してる高校の生徒、うちらの周りに誰もいないもんね。その、ひねくれた性格をなおして、友達つくりなさいよ!」


「だよねぇ~!」



 姫井を取り囲み、ゲラゲラと大声で笑う女子生徒。



「ちなみに、うちら学校サボったのよ。制服のままだけど、朝から遊びに行く予定なんだわ」


「もう同じ学校じゃないから、注意とかやめてよね!もと学級委員長さん!」


「まあ、うちらが強引に押しつけて学級委員やらせたんだけどね、きゃはははっ!」




 姫井は口を閉じたまま、顔を俯かせて今にも泣き出しそう……





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