レインコートもいいけど、傘は必要
この前、姫井が僕の目の前に立っていたので、座席を譲ろうと声をかけた。
「もしよければ、僕のかわりに座ってもいいよ」
立ち上がろうとした瞬間、彼女が小声で言い返してくる。
「遠慮させてもらうわ」
その言葉を聞いた僕は、無言で腰を下ろした。
僕と姫井は同じクラスの学級委員長と副委員長だけど、何だか噛み合わない。
担任教師から選任されて断れず、渋々だけど承諾した。
お互い、中学の時に学級委員の経験があるからと、先生に無理矢理おしつけられた感じ。
とりあえず僕が委員長を引き受け、姫井は副委員長に決まったんだけど、いつも小声でブツブツと愚痴をこぼしてヤル気はない。
嫌われてもいいから、僕は積極的に彼女へ話かけた。
視線を横にそらし、小声で文句を言ってくるのは想定していた態度。
いつも小さな声で話し、見た目がおとなしそうな姫井だけど
クラスメイトが全員参加する学級会で、大声を張り上げて怒ったことがある……