レインコートもいいけど、傘は必要
3.同じ高校の同級生 ~ side 姫井 渚 ~
私、姫井 渚は地元から少し離れた高校に通うため、登下校に鉄道を利用してる。
始発から数カ所の駅に停車して、私が乗り込む駅に電車が到着するころには乗客でいっぱい。
あいてる座席が当然のように無いので、しかたなく手すりに掴まって立っている。
警笛を鳴らし、動き出す電車は車体が左右に揺れて体がふらついてしまう。
私は右手で鉄パイプの手すりに掴まり、左手をスカートのポケットに入れる。
学校の制服は夏用に衣替えしてるので、ブラウスにサマーセーターを着てるから動きやすいのだけど、人で混雑する車内は蒸し暑い。
「はあ……」
私に向けた熱い視線を感じて、思わず溜息がでてしまう。
視線を感じる方向に目を向けると、座席にすわるアノ人がいた。
同じ高校の同級生でクラスも一緒、男子生徒の星野 拓也だ。
この前、偶然だけど座席にすわる彼の目前に立つことがあった。
気をつかって、私に席を譲ろうと立ち上がり声をかけてきたようね。
その時は何だか照れくさくて、思わず冷たい態度で断ってしまったけど、悪意はないの。
ただ、二つ前の駅で乗車する彼は、必ず座席にすわれるみたい。
それがちょっと、ムカつくだけなのよ。
電車に揺られながら立ってるのは、けっこう疲れるんだから……