新人メイドと引きこもり令嬢 ―2つの姿で過ごす、2つの物語―
《4》
「そろそろ、御主人様のお夜食を運ぶ時間だな…」
シェフが時計を見ながらそうつぶやく。
「夜中に召し上がるんですね」
「ああ、ワインなんかを少々な。…あ、まずいな…あと少しで御主人様の為の茶葉が無くなる…参ったな、市場が閉まる頃だ」
棚を漁っていたシェフは娘に向き直った。
「悪いが、リン…」
「あ、はい。ではお茶を買って…」
シェフは苦笑いで首を振る。
「いや、リンは御主人様にお夜食を差し上げてきてくれ。茶葉は特製茶葉でな、違う店を探さなきゃならないから分かりづらいはずなんだ」
「え…!?」
「お前なら御主人様も気に入ってくださるだろうしな!飾らない娘の方がお好きなはずだ、頼んだぞ!」
娘は、有無を言わさずチーズやワインの置かれたカートを渡され、シェフは行ってしまった。
「そんな…」
娘はトボトボと主人の部屋へ向かった。
行く手に誰かがいれば頼むつもりだったが、さすが使用人の少ないという屋敷、全く人の気配は無かった。
仕方なく覚悟を決め、なるべく下を向き分からぬようにして、主人のいる居室の戸を叩いた。
シェフが時計を見ながらそうつぶやく。
「夜中に召し上がるんですね」
「ああ、ワインなんかを少々な。…あ、まずいな…あと少しで御主人様の為の茶葉が無くなる…参ったな、市場が閉まる頃だ」
棚を漁っていたシェフは娘に向き直った。
「悪いが、リン…」
「あ、はい。ではお茶を買って…」
シェフは苦笑いで首を振る。
「いや、リンは御主人様にお夜食を差し上げてきてくれ。茶葉は特製茶葉でな、違う店を探さなきゃならないから分かりづらいはずなんだ」
「え…!?」
「お前なら御主人様も気に入ってくださるだろうしな!飾らない娘の方がお好きなはずだ、頼んだぞ!」
娘は、有無を言わさずチーズやワインの置かれたカートを渡され、シェフは行ってしまった。
「そんな…」
娘はトボトボと主人の部屋へ向かった。
行く手に誰かがいれば頼むつもりだったが、さすが使用人の少ないという屋敷、全く人の気配は無かった。
仕方なく覚悟を決め、なるべく下を向き分からぬようにして、主人のいる居室の戸を叩いた。