新人メイドと引きこもり令嬢 ―２つの姿で過ごす、２つの物語―

　そして次の日、とんでもない現状を知ることになった。


「おはようございますお嬢様…！失礼いたします…！！」

　執事は落ち着かない様子で娘のもとへ来ると、いつも通りに食事を置く。
　そしてひと呼吸置くと、深々と頭を下げた。

「お嬢様…申し訳ありません…！今後はメイドを…いえ、メイドの真似事を控えて頂きたいのです…」

「え…！？あ、あの…どうかしたのですか…？？」

娘はかなり取り乱す。

「“リン”の存在が…あろうことか屋敷外で噂になり始めてしまったのです…。今まで、他の者達には内密にするよう言って、取り計らっていたのですが…」

「あ…」

「今まで屋敷内でも、どちらの姿でも他の使用人達にもなるべく遭わぬようにして頂いておりました…。しかし、御主人様の御眼鏡に叶い、すぐに追い出されなかった若者は、今までほとんどいなかったのです。若い娘であれば尚更のこと…」

「そんな…」