新人メイドと引きこもり令嬢 ―2つの姿で過ごす、2つの物語―
「なんと哀れな事に、私の腐れ縁の令嬢嫌いのこの男のもとに、リリシア嬢は嫁ぐ候補となってしまったからね…。まあそれは仕方が無い。しかしリン、君は似ているというじゃないか。そこで、愛らしいメイドの君を引き抜きに来たんだ」
「あ、あの…」
あまりにも突然の出来事に、娘はかなり混乱していた。
(私が“リリシア”なのに…でも、なんと言って切り出せばいいの??ご主人様だけにまずは告げるつもりだったのに…私はどうしたら…)
「…全く、引きこもりの令嬢リリシアだと?我が腐れ縁の仲ながら、聞いて呆れる」
黙って聞いていた主人がやっと口を開き、続けてきっぱりと告げた。
「リリシアなどという娘はいない」
「え…!?」
主人のはっきりとした言葉に、その場にいた誰もが耳を疑った。
「何を言っている、血迷ったのか?リリシアは君の花嫁候補だろう!?」
客人の男もさすがに慌てて言う。
すると、主人は落ち着き払ったまま話を始めた。
「…ある娘がいた。父の事業が成功し、今や金持ちの仲間入りだ。娘は“らしさ”を失うことを嫌い、父が娘を紹介に出向くとき以外、他の庶民たちと変わらない姿で過ごしていたそうだ」
「…!!」
「毎日手伝いの者と家で料理をし、裁縫が好きだったという。しかもその家の娘だとわからないよう、外への出入りは裏口からだったそうだから健気なものだ…」
主人の話に彼女は呆然と黙り込む。
「あ、あの…」
あまりにも突然の出来事に、娘はかなり混乱していた。
(私が“リリシア”なのに…でも、なんと言って切り出せばいいの??ご主人様だけにまずは告げるつもりだったのに…私はどうしたら…)
「…全く、引きこもりの令嬢リリシアだと?我が腐れ縁の仲ながら、聞いて呆れる」
黙って聞いていた主人がやっと口を開き、続けてきっぱりと告げた。
「リリシアなどという娘はいない」
「え…!?」
主人のはっきりとした言葉に、その場にいた誰もが耳を疑った。
「何を言っている、血迷ったのか?リリシアは君の花嫁候補だろう!?」
客人の男もさすがに慌てて言う。
すると、主人は落ち着き払ったまま話を始めた。
「…ある娘がいた。父の事業が成功し、今や金持ちの仲間入りだ。娘は“らしさ”を失うことを嫌い、父が娘を紹介に出向くとき以外、他の庶民たちと変わらない姿で過ごしていたそうだ」
「…!!」
「毎日手伝いの者と家で料理をし、裁縫が好きだったという。しかもその家の娘だとわからないよう、外への出入りは裏口からだったそうだから健気なものだ…」
主人の話に彼女は呆然と黙り込む。