新人メイドと引きこもり令嬢 ―2つの姿で過ごす、2つの物語―
《11 裏》
「…妬けるな…」

 主人は呟き、娘を突然抱き上げた。
 彼女は狼狽える。

「あ、あの、どこへ…?」

「お前には尋問が残っている」

「!!」

 冷たく言い放った主人は、娘を抱き上げたまま部屋の奥の本棚に向かった。

「え??」

 いつの間にか本棚の奥に隠し扉が現れた。
 主人はその戸を開いて細い通路を行き、突き当りで、持っていた鍵を小さな穴に差し込むと、扉が開いた。

「あ…!!」

 娘が見覚えがあるのも当たり前。
 そこは自分に与えられていた部屋で、開けた扉は壁にそっくりなものだった。

「…。」

「ここは元々、私のもう一つの部屋だ。一人きりでいたい時、自分の時間が欲しい時に使っていた」

主人は娘をベッドにやる。

「…!!」

「さあ、尋問の時間だ…」

 主人は娘の身体をベッドに押し付け、娘の耳元で囁くように言った。

「…お前はコウが好きだと言ったな…?ではなぜ、あの男が来たときに行きたくないと言わなかった…?」

「そ、それは…」

「あの男について行けば、二度と“コウ”には会えない。…あの男に抱かれたかったか?あいつは隣町一番の女好きだ。顔が好みのお前など、言いくるめて身体を奪うに決まっている…」

「い、嫌ですっ…!あんな人にされたくありませんっ…!!」

 彼女は恐ろしくなり涙目になった。
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